仮面の独白。
好きの反対は無関心だって、どっかの誰かが言ってたみたいに、関わらなければよかったのさ。
そうすれば、俺なんかに好かれることもなかったのに。
初めてはなんだったか。
何度か俺を止めようとしてくれた人はいたと思う。気に掛けてくれた人だっていた。でも、それまでだった。
失って好きだったと気付いた彼女がいた。
好きだったよ。…彼女は、思えば初恋のあの人に似ていた。
…初恋ぐらい俺にもあるよ。やだなァ。
でもそれは失ったからこその感情でもあった。ただ楽しかったんだ、彼女に構うのが。嫌がりながらも本気で拒絶出来ない彼女なら、俺を愛してくれるんじゃないかって。…そう、そんな、どうしようもない期待を、してしまって。
だから目の前で、しかも俺の手でそれを奪ってしまったショックは恋慕へと縋るように変わってしまった。
また自分自身で俺は欲しいものを壊したのかと思ったさ。
バングルをずっと抱えていたのは、ちょっとした独占欲だった。期待が事実だったという証拠が欲しかっただけ。
…ジョーカーとしてはあるまじき行為ということはわかっていたけれど、正直そこまで重大なことだとは思ってなかったよ。バングル一つでゲームの勝敗が大きく左右されるほど、当時はゲームも進んでいなかったからね。
そのことを強く責め立てて来たのが最初、…だったかなァ。
あの時は、暴かれたくなくて。触れて欲しくなくて、でもわかってたんだ、君の視線が何かを責めるような咎めるようなそれになっていたことに。
だからカマを掛けた。俺にわざわざ関わってきたところで無意味だって馬鹿馬鹿しいって思ってもらって関わりを切断しようと思ったんだ。
案の定、くだらないと君はあの時立ち去ってくれた。だからこれでいいんだーって思ったんだけど。
…君って、ほんと学習能力がないのか、それともとんだ物好きだったのか。
次は俺のことを好きって言ってくれた少年の時じゃないかなァ。
ゲームのためにその感情をただひたすらに利用した。壊れてしまってもいいなって思ったんだ。
…うん。信じてなかったんだ、その、好きって言葉をね。
とってつけたようなものだと思っていたし、本当だと言うならと駆け引きの材料にした。
それも最終的に台無しにしたのは君だったよねェ。
今は、それでよかったと思ってはいるんだけど、ね。
最初の彼女のこともあるから、俺に関わる…と、いうより邪魔はもうしてこないだろって思ってたんだよ。
なのに遠慮なくかかわってきたし、挙句の果てに君は俺のことをまるで可哀想なものを見るような目で見て来たでしょ?
…わからないわけないでしょ。憐れだなって全身が言ってきてたじゃないの。
そのあたりから俺は君が“大嫌い”になったんだ。
人間を愛すって決めた時から、逆を作ってはならないってことはわかってた。
…本当は、触れた指先から全てまでが嫌悪してしまうぐらい人間なんて大嫌いだから。だから、それを反転させるんだから、その逆を作ってはいけないって、わかってた。
でも嫌いになっちゃったんだ。俺の頑張りを台無しにする君が、どうしようもなく。
そんな君が一度だけ、俺の前で随分と駄目になってしまった時があったでしょう?
…理由はまあ、何となくわかってたけど。人の中をぐちゃぐちゃに掻き乱しておきながら、いざそれを他にやられて意気消沈して。
正直すっごい面白くなかった。
だからいっそ壊してやろうかと思ったんだ。そこで駄目になるならそれはそれで結構。それこそ……ああ、いやこの話はよそう。
最終的にはそれで調子が戻って、手土産に人の事をさらに掻き乱しやがったわけだけどね君は。
それでも、もうどうしようもないって割り切ることは、それでも中々出来なかったな。
人間の一大決心が揺らいじゃうとその動揺でバランスが崩れてしまう。大嫌いで憎くてたまらない人間を、どこかで許容しようとしてしまう自分が出来てしまう。
それが嫌で拒絶して。気付いたら身体はボロボロ、痩せ我慢すればするほど醜くなっていく感覚がした。
そこから持ち直すのに随分と時間がかかってしまった。…その間に沢山のプレイヤーが死に、展開も色々と進んだ。
ブランク制度…それはいい機会だと思ったんだ。俺が俺らしくあれるやり方をするチャンスだと。
…君はまあ、予想通り彼女を選んだわけだけど。
沢山のことを経て、やっと改めてスタート地点に戻れたと思う。
俺は、マスケラ。ヴィクシィにおいて人間を心の底から愛す悲しきジョーカー。
…そんな俺は、君が世界で一番大嫌いで、
君が唯一特別なんだと、割り切れたよ。
――「憐れだと思うなら、切り捨てるべきだったね」とどうしようもない顔で笑った。
*君は別。そう心の中で割り切って人間を愛する姿勢を取り戻した憐れなジョーカーの話。
*最後の台詞から冒頭に続きます。
*誰宛かはわかると思うけど、別に本人に本当に語り掛けてるわけではないです。
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